明治安田J1リーグ第38節の審判は本当に「誤審」だったのか?事例と検証ポイント
基準日:2025-12-06。明治安田J1リーグ第38節(最終節)は、優勝・ACL圏・残留争いが絡む大一番となり、いくつかの試合で審判判定をめぐる激しい議論が起きました。特に鹿島アントラーズ対横浜F・マリノス戦では、VAR介入を伴うオフサイド判定や退場判定がSNSで大きな話題となり、「誤審ではないか」という声も多数上がっています。
もっとも、2025-12-06時点でJFA・Jリーグが第38節の個別プレーを公式に「誤審」と認定した発表はなく、評価はあくまでファンやメディア側の受け止めにとどまります。本記事では、第38節で問題視されている主な判定を整理しつつ、「誤審かどうか」を冷静に検証するためのポイントをまとめます。
第38節で「誤審」と言われている主な事例整理
鹿島アントラーズ vs 横浜F・マリノス戦の判定
Yahoo!リアルタイム検索のまとめや各種SNSによれば、鹿島アントラーズ対横浜F・マリノス戦では、VARが介入したオフサイド判定や退場判定をめぐって多くの議論が発生しました。
- オフサイドかどうかを確認するVARレビュー
- レッドカード相当かどうか(DOGSO/著しく不正なプレーかどうか)に関するレビュー
- アディショナルタイムの長さや〝取り方〟に対する不満
特に「鹿島寄りのジャッジではないか」「基準が一貫していないのでは」という指摘が多く、「誤審」「やり直すべき」という感情的な批判も見られました。
| 試合 | 論点となった事象(概要) | ファンの受け止め | 現時点の公式見解 |
|---|---|---|---|
| 鹿島 vs 横浜FM | VAR介入によるオフサイド/退場判定、アディショナルタイムの長さ | 「鹿島寄り」「基準が不明確」といった批判と、「基準内」という擁護が対立 | 2025-12-06時点で、JFA・Jリーグから個別プレーを誤審と断定する公式コメントは出ていない |
| その他のカード | PK/ノーファウルの判断、カードの有無など | クラブごとに不満の声はあるが、全国的な大炎上は限定的 | 同上。必要に応じて今後、審判委員会による検証結果が示される可能性 |
ここで重要なのは、「SNSでの批判が多い=公式に誤審と認められた」という意味ではないという点です。公式には、過去にもメディアブリーフィングなどで特定シーンについて「本来は〇〇であるべきだった」と説明されるケースがありましたが、それも冷静な検証の結果として出されたものです。
この章の要点
- 第38節で最も議論されているのは、鹿島vs横浜FM戦のオフサイド・退場判定・アディショナルタイムをめぐる判断。
- SNSで「誤審」という声は多いが、2025-12-06時点で公式に誤審認定されたわけではない。
- 誤審かどうかを判断するには、感情論だけでなく競技規則やVARプロトコルに照らした検証が不可欠。
「誤審かどうか」を検証するときの4ステップ
1. どの事象が問題になっているのかを特定する
まず、「どの瞬間・どの反則(あるいは非反則)が問題なのか」をはっきりさせることが重要です。同じシーンでも、
- 主審が取ったファウル/ノーファウル
- カード(警告・退場)の有無
- オフサイドかどうか
- アディショナルタイムの長さ
など、論点が複数に分かれていることがあります。SNSでは様々な不満が一緒くたに語られがちなので、まずは対象を整理しましょう。
2. 競技規則とVARプロトコルに照らす
JFAやJリーグが公開しているVAR解説によれば、VARが介入できるのは以下の4事象+主審が確認できなかった重大な事象に限られます。
- 得点かどうか
- PKかどうか
- 退場かどうか(2枚目の警告は対象外)
- 警告退場の人違い
VARは「明白な間違い」または「見逃された重大な事象」があったときだけ主審にレビューを促せる仕組みであり、「より良さそうな判定を探すシステム」ではありません。
3. 主審の位置・見え方を考える
リプレイ映像では「なぜ見えなかったのか」と思える場面でも、実際の主審の視野には選手がかぶっていたり、距離が遠かったりするケースが少なくありません。JリーグのVAR解説や元国際主審のインタビューでも、「映像で見るのとフィールドでの見え方は別物」という指摘が繰り返されています。
4. 「公式に誤審と認定されたか」を切り分ける
過去には、広島vs札幌戦の「本来はゴールを認めるべきだった事象」について、JFA審判委員会が臨時ブリーフィングで誤りを認めた例があります。
第38節の各シーンも、今後同様の検証や説明が行われる可能性はありますが、現時点では「公式に誤審と認定された」という事実はありません。この線引きをしておかないと、「主観的な不満」と「公式に誤りとされた事案」が混ざってしまいます。
この章の要点
- 誤審検証の第一歩は、「何が問題になっているのか」を細かく特定すること。
- VARは4つの重大事象にしか介入できず、「明白な間違い」が条件になる。
- 「自分がそう感じるか」と「公式に誤審認定されたか」は別物として整理する必要がある。
過去の公式「誤審」事例から見える教訓
JFAが誤りを認めたVAR事例
2023年のJ1広島vs札幌戦では、得点の有無をめぐる事象についてJFA審判委員会が臨時会見を開き、「本来は得点を認めるべきだった」と公式に誤りを認めました。
- VARチェック→オンフィールドレビュー→主審が得点を認めず
- 後日の詳細検証で、「ゴールインとすべきだった」と結論
- 検証結果は報道や公式チャンネルを通じて共有
このように、試合直後は納得できない判定でも、時間をかけて検証され、必要であれば公式にミスが認められる枠組みが存在します。
「幻のPK」などのグレーゾーン事例
一方で、元代表OBが「PKにすべき」とコメントしたにもかかわらず、公式には誤審と認定されていない「幻のPK」事例もあります。例えば鹿島と横浜FMの過去の対戦では、主審がノーファウルとした接触プレーを巡って議論が起きましたが、VARチェックの末に判定は維持されました。
こうしたグレーゾーンでは、「どちらとも取れるが主審の裁量として許容される範囲」と整理されることが多く、「誤審」とは区別して考える必要があります。
この章の要点
- 過去にはJFAが公式に誤りを認めたVAR事例があり、第38節の判定も今後検証対象になり得る。
- 専門家やOBが異なる見解を示しても、それだけで誤審確定ではない。
- 「明白な間違い」と「解釈の幅の中にある判定」の線引きが、誤審議論のカギになる。
第38節の「誤審」議論にどう向き合うか
チェックリストで冷静に整理する
- そのシーンは、VARが介入できる4事象のいずれかに当てはまるか。
- 主審の最初の判定と、VAR後の判定はどう変わったか/変わらなかったか。
- 競技規則を読み直すと、どの解釈が妥当と言えそうか。
- JFAやJリーグから後日コメントが出ていないか。
感情の爆発と選手・審判へのリスペクト
Jリーグは近年、審判や選手への誹謗中傷・カスタマーハラスメントに対して警鐘を鳴らし、違反行為には厳しい対応を取る方針を明確にしています。
判定に不満を持つこと自体は自然ですが、個人攻撃や人格批判・家族への中傷などにエスカレートするのは明確に一線を越えた行為です。「どこがどう誤審だと思うのか」を競技規則ベースで整理する姿勢こそ、建設的な議論への第一歩と言えるでしょう。
この章の要点
- 第38節の判定を検証する際は、VARの対象事象・競技規則・主審の位置関係などをセットで確認することが重要。
- 誤審と感じた場合でも、感情的な誹謗中傷ではなく、事実とルールに基づいた議論を心がけたい。
- Jリーグは審判・選手へのハラスメントに対して明確な対策方針を打ち出しており、ファン側にも節度ある振る舞いが求められている。
