明治安田J1リーグ第38節で審判へのクレームが多かった理由とは?感情とルールのギャップを解説
基準日:2025-12-06。J1最終節となる明治安田J1リーグ第38節は、鹿島アントラーズの9年ぶり優勝が決まる劇的なラウンドとなりましたが、その裏で「審判判定」に対するクレームや批判がSNS上で多く見られました。
特に、鹿島アントラーズ対横浜F・マリノス戦でのVAR介入や判定基準、アディショナルタイムの長さなどをめぐって、「鹿島寄りのジャッジではないか」「VARの意味がない」といった声も上がっています。本記事では、第38節でクレームが多発した背景を、試合の重要度・VAR運用・SNS時代の構造という3つの観点から整理します。
理由1:優勝・残留がかかる最終節ゆえの「感情の振れ幅」
1つの判定がシーズンを左右するシチュエーション
ゲキサカなどの報道によれば、鹿島は横浜FMを2-1で下して9年ぶり9度目のリーグ制覇を達成しており、この試合の結果が優勝争いに直結していました。同時刻開催の他会場でも、ACL出場や残留をめぐる重要なゲームが組まれており、
- 先制点が入るかどうか
- PKかどうか
- 退場者が出るかどうか
といった判定1つでシーズン全体の評価が変わりかねない状況でした。
そのため、第38節では普段以上に判定への注目が高まり、「少しでも不利に感じるジャッジ」は即座に不満やクレームにつながりやすい環境だったと言えます。
| 要素 | 第38節での特徴 | クレーム増加への影響 |
|---|---|---|
| 優勝争い | 鹿島vs横浜FMの結果で優勝が決定 | 「1つの判定がタイトルを左右した」という印象を持ちやすい |
| 残留・順位争い | 複数のクラブが残留やACL圏争い | 自クラブに不利と感じる判定への感情的な反応が強まりやすい |
| 試合の同時開催 | ほぼ同時間帯に10試合が開催 | 他会場の判定も含めて「うちだけ厳しい/甘い」と比較されがち |
この章の要点
- 第38節は優勝・残留・ACL争いが絡み、判定1つの重みが普段より大きい。
- サポーターの感情が高ぶりやすく、些細な差も「致命的な誤審」に感じられがち。
- 同時開催の他試合と比較されることで、「うちだけ損をしている」という被害感が増幅しやすい。
理由2:VARとアディショナルタイムへの期待と現実のズレ
「VARがあるのになぜ…」という期待値の高さ
JリーグやJFAの解説が繰り返し強調しているように、VARは「明白な間違いを減らすための補助システム」であって、「すべての判定をやり直すもの」ではありません。
しかし実際のSNSでは、
- 「VARを見たのになんでPKじゃないのか」
- 「オフサイドの線を引き直せば分かるはず」
といった投稿が多く、ファンの側では「VARがあれば正解に必ずたどり着ける」という期待が根強いことがうかがえます。第38節でも、鹿島vs横浜FM戦の判定をめぐって「VARまで入ったのに納得できない」という声が噴出しました。
アディショナルタイムの増加と体感時間
Jリーグのスタッツレポートでは、近年VARレビューや選手交代の増加に伴い、アディショナルタイム(特に後半)の平均値が伸びていることが指摘されています。
第38節のような重要試合では、
- VARレビューの時間
- ゴール後のセレブレーション
- 負傷や時間稼ぎと受け取られるプレー
などを合算した結果、表示されたアディショナルタイムが長くなり、リードされている側のサポーターから「長すぎる/短すぎる」といったクレームが出やすくなります。
この章の要点
- ファンの「VARがあれば全部正しくなる」という期待と、実際の運用(明白な間違いのみ介入)にズレがある。
- VARや選手交代の増加でアディショナルタイムが長くなり、「時間の扱い」もクレームの対象になりやすい。
- 第38節では重要試合が多かったぶん、VARとアディショナルタイムに対する不満が表に出やすい状況だった。
理由3:SNS時代の「拡散」とJリーグのハラスメント対策
数分で全国に広がる「怒りの声」
リアルタイム検索のまとめを見ても分かる通り、現在は試合中・試合直後に審判への不満や皮肉が大量に投稿され、それが瞬く間に拡散される時代です。
特定の主審名やVAR担当者名とともに、
- 「〇〇主審はもうJ1で笛を吹かないでほしい」
- 「またこの人か」「○○クラブにだけ甘い」
といった投稿が短時間で数百件単位で流れれば、試合を見ていなかった人にも「今日はひどい誤審があったらしい」という印象が先行してしまいます。
Jリーグのハラスメント対策と課題
Jリーグは近年、選手・審判・クラブスタッフへの誹謗中傷やカスタマーハラスメントに対する対応方針を公表し、「度を越えた言動には厳正に対処する」と明言しています。
- スタジアムでの違反横断幕・差別的チャントなどへの処分
- SNS上の誹謗中傷に対する注意喚起
- 審判や選手を「クレーマー化したコアファン」から守る必要性の訴え
それでもなお、第38節のような大舞台では感情的な投稿が増えやすく、建設的な判定議論と、個人攻撃・人格攻撃の線引きが課題として残っています。
| クレームの内容 | 背景にある要因 | 望ましい対応 |
|---|---|---|
| 「誤審だ」「〇〇寄りジャッジだ」 | 感情の高ぶり/VARへの過度な期待 | 事象を切り分け、競技規則・VARプロトコルに照らして議論する |
| 審判個人への人格攻撃・家族への中傷 | SNSでの過激表現・匿名性 | Jリーグの方針に沿い、クラブ・リーグが毅然とした対応を取る |
| 主観だけに基づく陰謀論的な批判 | 情報の断片的な切り取り | 公式映像・解説・ブリーフィングなど複数ソースで事実確認する |
この章の要点
- SNSの存在により、審判へのクレームは数分で全国に拡散し、「大炎上」に見えやすくなっている。
- Jリーグは誹謗中傷・ハラスメントへの対策を強化しており、今後も審判・選手を守る枠組みづくりが続くとみられる。
- ファン側にも、「判定への批判」と「個人攻撃」を明確に分けるリテラシーが求められる。
まとめ:第38節のクレームをどう受け止めるか
チェックリストで自分の感情と事実を整理しよう
- その判定はVARの対象事象(得点/PK/退場/人違い)だったか?
- リプレイを見ても「明白な間違い」と言えるのか、それとも解釈の範疇か?
- JFAやJリーグから、後日何らかの説明・ブリーフィングが出ていないか?
- 自分の投稿は「判定の是非」を論じているか、「審判個人」を攻撃していないか?
第38節でクレームが多かったのは、最終節という特殊な状況、VARとアディショナルタイムへの期待と現実のギャップ、そしてSNS時代の拡散メカニズムが重なった結果と言えます。判定への不満をゼロにすることはできませんが、ルールへの理解とリスペクトを持ちながら議論を深めていくことで、Jリーグ観戦は今よりももっと豊かな体験になるはずです。
