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卓球混合団体W杯2025 日本代表の采配を徹底評価

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卓球混合団体W杯2025 日本代表の采配を徹底評価

卓球混合団体W杯2025(中国・成都)は、洛杉矶五輪の混合団体採用を見据えた新フォーマットで行われており、監督・コーチ陣の「采配」が勝敗を大きく左右します。ここでは、2025-12-06時点での日本代表の試合を俯瞰しながら、起用方針やオーダーの評価・課題を整理します。

フォーマットと采配の関係:なぜオーダーが重要なのか

混合団体W杯は「先に8ゲーム先取」で勝敗が決まるため、どのタイミングでエースを投入し、どの組み合わせでダブルスを組むかが極めて重要です。

基本ルールとオーダーの制約

  • 試合順は「混合ダブルス → 女子シングルス → 男子シングルス → ダブルス×2」で固定
  • 混合ダブルスに出た選手は、その試合ではシングルスに出られないという制約がある
  • 最後の2試合(男女ダブルス)の順番は、「格下シード側のキャプテン」が選択権を持つ
  • 混合ダブルスに誰を置くかで、シングルスの顔ぶれがほぼ決まる
  • 「どの試合で8点目を取りに行くのか」を逆算したオーダーが重要
  • キャプテンの選択が、終盤のダブルス戦略を左右する

ステージ1の采配評価:オーストラリア・インド・クロアチア戦

オーストラリア戦8–1:理想的な“肩慣らし”オーダー

デイ1のオーストラリア戦では、早田ひな/戸上隼輔(報道ベース)が混合ダブルスに入り、日本は8–1で快勝しました。

  • 混合ダブルスに実績十分のペアを置き、「確実に先手を取る」采配
  • 女子シングルスには張本美和、男子シングルスには張本智和など主力を配置し、序盤で安全圏を作ったとみられる
  • 終盤のダブルスをフルに使う前に8点目に到達し、体力的な消耗も最小限

インド戦8–4:想定以上に試された采配と修正力

ステージ1第2戦のインド戦は、日本が8–4で勝利しつつも「mighty scare(大きな冷や汗)」と表現されました。

  • 女子シングルスではマニカ・バトラが伊藤美誠に勝利し、采配面でも「相手のエースぶつけ」が的中した形に
  • 日本はその後の男子シングルス・ダブルスで立て直しており、「途中からのオーダー修正」と「ベンチの声掛け」が機能したと評価できる
  • 結果的に4点を許したものの、8点目までの道筋は崩さなかった点はプラス

クロアチア戦:相手の勢いを封じる“締めのオーダー”

ステージ1の最終戦・クロアチア戦では、クロアチアがそれまで好調だった中で、日本がその勢いを止める形で勝利しました。

  • 混合ダブルスで主導権を握り、そのままシングルス・ダブルスと流れを渡さない起用が功を奏した
  • ステージ2への「結果持ち越し」を意識し、エース級をしっかり投入した点は戦略的
  • 一方で、主力をフルに使ったぶん、後半日程への疲労をどう分散させるかが今後の課題

ステージ2の采配:ドイツ・スウェーデン・香港・韓国戦

ドイツ戦8–3:欧州強豪にハマった“バランス型オーダー”

中国メディアや欧州卓球連合のレポートによれば、ドイツは高い男子シングルス力を武器にしていましたが、日本は8–3で勝利しています。

  • 混合ダブルス・女子シングルスでリードを取り、男子シングルスで多少崩れても全体として優位を保てる構成
  • 男子ダブルスには世界トップクラスのダブルスコンビを起用し、「最後はダブルスで締める」戦略を明確化
  • エース1人に過度に依存せず、「誰が出ても計算できる」布陣にした点は高評価

スウェーデン戦8–0:ローテーションと主力温存の両立

デイ5のレポートでは、「日本はスウェーデンに8–0の完勝を収め、無敗をキープした」と伝えられています。

  • 相手とのマッチアップを踏まえ、リスクの低い組み合わせを選択
  • 一部ポジションでは若手・控え組を起用しつつも、要所に主力を置いて“取りこぼしゼロ”を実現
  • ノックアウトステージに向けたコンディション管理という意味で、非常にバランスの良い采配

香港戦8–2・韓国戦8–2:アジア勢との駆け引き

香港戦では8–2で快勝し、韓国戦でも同じく8–2で勝利したと伝えられています。

  • 香港戦では、松島輝空・大藤沙月ら新世代の起用が注目され、「経験値を積ませつつ勝ち切る」采配と評価できる
  • 韓国戦では、アジアトップレベルのラリーに対応できるよう、レシーブ力とラリー耐性の高い選手を中心に構成したと見られる
  • 両試合ともに、早めにリードを作ってダブルスに余裕を持たせる理想的な展開で、采配面のミスは少ない

フランス戦8–7逆転負けに見る采配の課題

ステージ2最終盤、フランス戦の8–7逆転負けは、采配評価の観点でも大きな論点になっています。

オーダー自体は“攻めの采配”だった

  • 混合ダブルスに伊藤美誠と男子主力を置き、「確実に先手を取る」意図は成功した
  • 女子シングルスに大藤沙月を起用し、若手ながらも勢いを買った点は前向きな判断
  • 男子シングルスに張本智和を置き、「ここでほぼ試合を決める」狙いも理解できるオーソドックスなオーダー

修正が追いつかなかったポイント

  • 張本智和がフェリックス・ルブランにストレートで敗れたことで、想定していた“勝ちパターン”が崩れた
  • 続く男子ダブルスでルブラン兄弟に勢いを止められず、「一度傾いた流れ」を断ち切る交代カードがなかった
  • 終盤の女子ダブルスは日本が取り返したものの、最終ゲームでのペア選択やタイムアウトのタイミングについては議論の余地が残る
局面 主な起用 評価
序盤(混合ダブルス〜女子S) 伊藤美誠+男子主力/大藤沙月 リードを作るという意味では「攻めの采配」で成功
中盤(男子S・男子D) 張本智和/男子ダブルスペア 対ルブラン兄弟対策が不十分で、流れを止められず
終盤(女子D) 女子ダブルス主力ペア 一度は逆転を食い止めたが、最終ゲームで相手を上回れず

総合評価:日本代表采配の「良い点」と「今後の改善点」

  • 良い点1:ステージ1〜2を通じて、ほとんどの試合で最適に近いオーダーを組み、特にドイツ・スウェーデン・韓国といった強豪との試合で結果を出したこと
  • 良い点2:若手とベテランをうまくミックスし、将来を見据えた経験値の分配も行われている点
  • 改善点:フランス戦のように「想定通りにエースが勝てなかった場合」に備えたセカンドプラン・サードプランの用意と、流れが完全に相手に傾いた場面でのタイムアウトやオーダー変更のスピード感

準決勝以降(第3ステージ)は1敗が即メダル争いに直結するため、「誰が出ても勝てる」汎用性と同時に、「相手ごとにプランを変える柔軟性」がより一層求められます。日本代表がここまでの采配から何を学び、ノックアウトステージでどう生かすかに注目が集まります。