明治安田J1リーグ第38節でVARはなぜ介入したのか?判断理由をわかりやすく整理
基準日:2025-12-06。明治安田J1リーグ第38節では、鹿島アントラーズ対横浜F・マリノス戦を中心にVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が複数回介入し、その是非をめぐって大きな議論が巻き起こりました。
一方で、JリーグやJFAが示すVARの原則は「最小限の干渉で最大の利益を得ること」であり、すべてのプレーをやり直す仕組みではありません。本記事では、第38節で話題になったVAR介入を題材に、「そもそもどんなときにVARは入るのか」「なぜ介入しなかったシーンもあるのか」を整理します。
VARが介入できるのは4つの事象+重大な見逃しのみ
公式ルールにおけるVARの対象範囲
Jリーグ公式サイトやJFAの解説によると、VARが介入できるのは次の4事象と、主審が確認できなかった重大な事象だけです。
| カテゴリー | 事象 | 具体例 |
|---|---|---|
| 得点かどうか | ゴールの有無 | オフサイド・ファウル・ハンドなどが得点前にあったかどうか |
| PKかどうか | PKの与え方/取り消し | ペナルティエリア内のファウル・ハンド・シミュレーション |
| 退場かどうか | 一発退場(DOGSO/深刻な反則行為など) | 危険なタックル、肘打ち、決定機阻止など |
| 人違い | 警告・退場を出す選手の取り違え | 別の選手にカードを出してしまった場合の訂正 |
このほか、主審が見逃した重大な事象(例:オフボールでの暴力行為など)にも介入できますが、「何でもかんでも映像でチェックする」ことは許されていません。哲学はあくまで「明白な間違いをなくす」ことであり、論争の余地があるグレーゾーンには原則として踏み込まない仕組みです。
この章の要点
- VARは「得点」「PK」「退場」「人違い」+重大な見逃しにしか介入できない。
- 目的は「最良の判定」を探すことではなく、「明白な間違い」を減らすこと。
- グレーゾーンは、基本的に主審の裁量と解釈の範囲に委ねられている。
第38節で話題になったVAR介入のパターン
鹿島 vs 横浜FM戦:オフサイド・退場をめぐるレビュー
第38節の鹿島アントラーズ対横浜F・マリノス戦では、Yahoo!リアルタイム検索のまとめでも「オフサイド判定や退場判定についてVARが何度も介入した」と紹介され、多くのサポーターが判定の妥当性を議論しました。
- ゴールの直前にオフサイドがなかったかどうかのチェック
- 危険なタックルや決定機阻止に当たるかどうかの確認
- オンフィールドレビュー(OFR)で主審がモニターを確認する場面
中継映像やSNS上の情報からは、「どのプレーが最終的にどう判定されたか」については複数の解釈があり、全てのシーンの詳細を第三者が確定させることは困難です。ただし、少なくとも上記のようなVAR対象事象をめぐるレビューが複数回行われたことは、多くの投稿から読み取ることができます。
その他の試合でのVARチェック
第38節は優勝・残留・ACL争いなど重要な要素が絡む試合が並んだため、各地で「ゴールシーンの確認」「ペナルティエリア内の接触プレーの確認」など、通常よりもVARチェックの重みが増したラウンドと言えます。具体的な介入回数の公式データは現時点では公表されていませんが、Jリーグの統計レポートでも、近年VARチェックやレビューに伴う試合中断時間が増加傾向にあることが指摘されています。
この章の要点
- 鹿島vs横浜FM戦では、オフサイドや退場をめぐって複数回のVARレビューが行われ、判定が大きな話題となった。
- 最終節ならではの重要性から、他の試合でもゴールやPKに関するVARチェックの重みが増している。
- VARの介入回数や所要時間は、近年のJリーグで全体的に増加傾向にある。
なぜ「VARが介入しなかったのか?」という疑問が出るのか
介入条件は「明白な間違い」か「重大な見逃し」
元国際主審やJFA審判委員会の説明では、VAR介入の条件は以下の2つに要約されます。
- はっきりとした、明白な間違い(clear and obvious error)がある
- 主審が確認できなかった重大な事象がある
つまり、「自分はPKだと思う」「ファウルに見える」というレベルでは、介入条件を満たさないことも多く、
- リプレイを何度見ても意見が分かれる接触プレー
- 基準上どちらとも取れるようなハンド
などは、主審の裁量としてそのまま維持されることが少なくありません。
「幻のPK」「ノーゴール」など過去事例との比較
過去のJ1では、「幻のPK」や「本来はゴールだったはず」と議論された事例がいくつもあります。たとえば、鹿島と横浜FMの対戦でPKが与えられなかったシーンについて、日本代表OBが「ファウルに見える」とテレビでコメントしたケースなどです。
しかし、その多くは「グレーゾーンの範囲に収まる」として、公式には誤審認定されていません。このギャップが、「なぜVARが入らないのか」「どうして主審の判定が維持されるのか」という疑問や不満につながっています。
この章の要点
- VARが介入するには、「明白な間違い」または「重大な見逃し」が必要で、グレーゾーンの判定には原則介入しない。
- 過去の「幻のPK」事例も、公式には誤審と認定されず、主審の裁量として扱われたケースが多い。
- ファンの「なぜ入らない?」という疑問の多くは、VARの介入条件への理解不足から生じている側面がある。
第38節のVARを理解するための実践的な見方
1シーンごとに「チェック→レビュー→最終判定」を分けて考える
VAR関連のシーンは、次の3段階に分けて整理すると理解しやすくなります。
- チェック:ゴールやPKなど、対象事象が自動的にサイレントチェックされている段階。
- レビュー:明白な間違いの可能性があるとVARが判断し、オンフィールドレビュー(OFR)へ進む段階。
- 最終判定:映像を見た主審が、自分の判定を維持するか変更するかを決める段階。
「VARがPKを与えた」「VARがゴールを取り消した」といった表現がよく使われますが、正確には「VARがレビューを勧告し、最終的な判定は主審が下した」という理解が重要です。
第38節のVARを見るチェックリスト
- このシーンは「得点」「PK」「退場」「人違い」のどれに当たるのか。
- 主審は最初にどう判定し、VAR後にどう変わった(あるいは維持された)のか。
- リプレイを見ても「明白な間違い」と言えるのか、それともグレーゾーンなのか。
