中国のレーダー照射は何があったのか?最新事案と過去事例を時系列まとめ
2025-12-07現在、日本政府は中国軍戦闘機による航空自衛隊機へのレーダー照射について、中国側に強く抗議しています。今回の事案は沖縄本島南東の公海上空で発生し、「危険照射」として日中関係の新たな火種となっています。この記事では、2025年12月の最新事案を軸に、2013年の中国海軍レーダー照射事件や2018年の韓国艦による照射問題、南シナ海でのレーザー照射など、関連する事案を時系列で整理します。
2025年12月:沖縄周辺での中国軍機によるレーダー照射
今回の事案の概要(2025年12月6日〜7日)
防衛省や各種報道によれば、2025年12月6日、中国軍のJ-15戦闘機が沖縄本島南東の公海上空で自衛隊F-15戦闘機に対して火器管制レーダーを断続的に照射しました。一連の照射は少なくとも2回確認され、1回は数分程度、もう1回は30分前後続いたとされています。
日本政府は即日、中国側に外交ルートを通じて抗議。翌7日には小泉進次郎防衛相がオーストラリアのマールズ国防相との会談で事案を説明し、共同会見で「危険な行為」として再発防止を求める姿勢を示しました。中国国防省はこれに対し、「日本側が中国軍の訓練を妨害した」と反論し、双方の主張は平行線となっています。
- 場所は沖縄本島南東の公海上空で、日本の領空ではないものの自衛隊の警戒監視エリア内。
- 中国軍機による火器管制レーダー照射は、攻撃の前段階ともなり得るため「ロックオン」と表現され、極めて危険とされる。
- 日豪防衛相会談でも大きなテーマとなり、地域安全保障の文脈でも懸念が共有された。
レーダー照射・レーザー照射を巡る主な事案の時系列
2013年〜2025年の主な出来事
今回の事案は突発的なものではなく、2010年代以降、東シナ海や南シナ海などで繰り返されてきた「レーダー照射」「レーザー照射」を巡る対立の延長線上にあります。代表的な事案をまとめると、以下のような時系列になります。
| 年月 | 場所 | 当事者 | 事案の概要 |
|---|---|---|---|
| 2013年1月 | 東シナ海 | 中国海軍艦艇 / 海上自衛隊護衛艦 | 中国海軍フリゲートが海自護衛艦「ゆうだち」に火器管制レーダーを照射したと日本が発表。中国側は否定し、日中関係が緊張。 |
| 2018年12月 | 日本海(能登半島沖) | 韓国海軍駆逐艦 / 海自P-1哨戒機 | 海自P-1哨戒機が韓国駆逐艦からレーダー照射を受けたと日本が主張し、韓国側が否定。日韓関係の新たな火種となる。 |
| 2023年2月 | 南シナ海(フィリピンEEZ内) | 中国海警局船 / フィリピン沿岸警備隊 | 中国海警局船がフィリピン側の艦船に「軍事級レーザー」を照射し、一時的な視界障害を引き起こしたとフィリピン側が抗議。 |
| 2024年〜2025年 | 南シナ海周辺 | 中国海警局 / フィリピン公船 | レーザー照射や放水、進路妨害などが断続的に発生し、日本の防衛研究機関もレポートで問題を指摘。 |
| 2025年12月 | 沖縄本島南東の公海上空 | 中国軍J-15 / 航空自衛隊F-15 | 中国軍戦闘機が自衛隊機に火器管制レーダーを断続的に照射。日本は「極めて危険」と抗議、中国は「通常の訓練」と反論。 |
- 2010年代から、レーダー・レーザー照射は東シナ海・日本海・南シナ海で繰り返されている。
- 日本と中国、韓国、中国とフィリピンなど、複数の国同士で同種の対立が発生している。
- 2025年の沖縄周辺の事案は、これまで主に海上で起きていた問題が「空対空」でも発生した点が大きな特徴とされる。
なぜレーダー照射が危険行為とされるのか
「ロックオン」の意味と軍事的メッセージ
火器管制レーダーは、本来ミサイルや砲を命中させるために使用されるレーダーで、標的への照準・追尾に用いられます。そのため、照射された側からすると「いつ発射されてもおかしくない」状況と受け止めざるを得ず、軍事的にはほぼ攻撃直前の行為に相当すると説明されます。
- 火器管制レーダー照射は、偶発的な衝突や誤射を誘発しかねないため、各国軍の行動規範でも避けるべき行為とされる。
- その一方で、当事国は「通常の警戒行動」「訓練の一環」などと主張することが多く、認識のギャップが緊張を高めやすい。
- レーザー照射は直接的なダメージこそ限定的でも、乗員の視力障害など安全上のリスクがある。
日本政府と自衛隊の対応・課題
抗議・再発防止要請と同盟国との連携
日本政府は今回の事案に対し、中国側へ厳重抗議を行うと同時に、オーストラリアや米国などの同盟国・同志国と情報共有を進めています。一方で、2013年や2018年の事案でもそうであったように、相手国が事実関係を認めない場合、再発防止の実効性をどう高めるかが課題として残ります。
- レーダー照射の証拠をどこまで公開するかは、軍事機密と抑止力のバランスを取る難しい判断となる。
- 日豪・日米豪など多国間での行動規範づくりや共同訓練が、抑止とリスク低減につながると指摘されている。
- 一方で、中国側との対話チャンネルを維持しつつ、偶発的衝突を避ける「ホットライン」の活用なども重要なテーマとされている。
今後の見通し(予定・未確定)
東アジアの安全保障環境の中で
今回のレーダー照射は、台湾情勢や南シナ海問題などを背景に、東アジア全体の安全保障環境が厳しさを増す中で起きた事案です。今後も同様の事案が発生する可能性は否定できず、各国の軍事活動ルールや危機管理の仕組みが一層重要になると見られます。
- 短期的には、今回の事案に関する追加情報公開や、日中間の防衛当局間協議の行方が注目ポイント。
- 中長期的には、台湾海峡・南シナ海における軍事バランス次第で、レーダー照射・レーザー照射を含む「グレーゾーン事態」が増える懸念がある。
- 具体的な再発防止策や国際的なルールづくりはまだ「未確定」であり、今後の外交・防衛政策の大きな課題となる。
