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卓球混合団体W杯 2025 日本代表 戦術分析

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卓球混合団体W杯 2025 日本代表 戦術分析

卓球「ITTF混合団体ワールドカップ2025」は、2025-12-06時点で第2ステージ終盤まで実施され、日本代表は中国・成都の完全アウェー環境の中で高い勝率を維持しています。本記事では、日本代表の戦術コンセプトやフォーメーション、相手別の戦い方を整理し、今大会の戦いぶりを分析します。

大会フォーマットが日本の戦術に与える影響

混合団体W杯は、男女混成チームによる「最大15ゲーム・先に8ゲーム先取したチームの勝ち」という特殊ルールで行われます。試合順は「混合ダブルス → 女子シングルス → 男子シングルス → ダブルス2試合」の固定で、混合ダブルスに出場した選手はその試合ではシングルスに出られないなど、オーダー面の制約が非常に大きいのが特徴です。

順番 種目 日本の基本方針
第1試合 混合ダブルス エース級ペアを置いて「先手必勝」。主導権を握り、後続のシングルスを楽にする。
第2試合 女子シングルス 張本美和・早田ひな・伊藤美誠・大藤沙月から相手との相性を見て選び、2点目を狙う。
第3試合 男子シングルス 張本智和・松島輝空らで「ここでほぼ試合を決める」プランが基本。
第4・5試合 男女ダブルス 必要ゲーム数に応じて、世界トップレベルのダブルスペアで締めに行く。

この章の要点

  • 「8ゲーム先取」方式のため、1マッチではなく「ゲーム数の積み上げ」が最重要。
  • 混合ダブルスのメンバー選択がシングルスの顔ぶれを大きく縛る。
  • 日本は序盤3試合でリードを作り、ダブルスで逃げ切る設計が基本戦略となっている。

日本代表の基本戦術コンセプト

日本は男女各4名、計8名のメンバーで構成されています。いずれも世界トップレベルの実績を持つ選手・急成長中の若手が混在しており、「どのポジションでも点を取りに行ける」厚みが戦術のベースになっています。

  • 混合ダブルス:松島輝空/大藤沙月、戸上隼輔/張本美和など攻撃力と安定感を兼ね備えたペアで先制を狙う。
  • 女子シングルス:相手エースとの相性で早田・伊藤・張本美和・大藤を使い分け、確実にポイントを取りに行く。
  • 男子シングルス:張本智和・松島輝空ら「勝ち頭」を中心に、流れを引き寄せる勝利を狙う。
  • ダブルス:男子は戸上/篠塚、女子は早田/伊藤や張本美和/大藤など、既存の実績ペアをベースに据える形が多い。

これらを組み合わせ、「混合ダブルスと女子シングルスで先行→男子シングルスで勝負→ダブルスでとどめ」というパターンが、日本の理想形として多くの試合で見られます。

この章の要点

  • 8名全員が「出たポジションで点を取りに行く」構成で、厚みのある布陣。
  • 基本パターンは「混合ダブルス+女子シングルスで先行→男子シングルスで勝負」。
  • ダブルスの強さが、逆転や逃げ切りの局面で大きな武器になっている。

対アジア勢への戦術:対中国・韓国・香港・インド

対中国:リスクと安定のバランス

王者・中国戦に向けて、日本は混合ダブルスに「とがみわペア(戸上隼輔/張本美和)」、シングルスに伊藤美誠・松島輝空ら攻撃的な選手を配置する「勝負のオーダー」で臨んだと報じられています。

  • ポイントを取りに行く局面では、積極的な3球目攻撃・台上からの先手を徹底。
  • 一方で、8ゲーム先取ルール上「無理打ちのミス=相手に流れを渡す」ため、リスク管理も重要。
  • 実際の中国戦では、一部のゲームでリードしながらも取り切れない場面があり、「勝負どころでのショット選択」が課題として浮かび上がりました。

対韓国・香港:ラリー戦を見据えたメンバー構成

韓国や香港といったアジア勢は、ラリー力とカウンターの上手さを武器にしているため、日本はレシーブ力・つなぎの精度が高い選手を多く起用しています。香港戦では、混合ダブルスの松島/大藤ペアが2-1で先勝し、張本美和・張本智和が続く形で8-2の快勝を収めました。

対インド:クセ球対策とゲームプラン

インド戦では、マニカ・バトラの独特な変化に伊藤美誠が苦戦しつつも、男子シングルスとダブルスで立て直して8-4で勝利したと伝えられています。

  • 「クセ球への対応に時間がかかる」相手に対しては、序盤から強打で押すよりも、まずラリーの型を作ることを優先。
  • 女子で苦しんだ場合でも、男子シングルスとダブルスでゲームを稼げるよう、全体のプランを組む。

この章の要点

  • 対中国は「攻め切るか・抑えるか」のバランスが勝敗を分ける。
  • 対韓国・香港では、ラリー耐性・レシーブ力を重視したメンバー構成。
  • 対インドのような“クセ球”相手には、個人戦術とチーム全体のリカバリープランが鍵になる。

対欧州勢への戦術:ドイツ・フランス・スウェーデン・クロアチア

欧州勢は総じて「攻撃的でフィジカルが強い」スタイルが多く、日本はボールの回転量・コース取りで主導権を握る戦術を採っていると見られます。

ドイツ・スウェーデン戦:中盤勝負で一気に押し切る

  • ドイツ戦では、序盤を互角で終えつつ、中盤以降に混合ダブルス・ダブルスで連取して8点目まで一気に到達する展開。
  • スウェーデン戦は8-0の完勝とされ、プレーそのものは競り合いが多いながらも「要所の1ゲーム」を落とさない戦い方が光りました。

フランス戦:逆転負けが示したヨーロッパ勢の力

フランス戦では、日本がリードしながらも終盤で逆転を許したと報じられており、フェリックス&アレクシ・ルブラン兄弟を中心としたフランスの攻撃力が際立った試合でした。

  • 序盤に混合ダブルス・女子シングルスでリードを作り、「日本の勝ちパターン」に入ったかに見えた。
  • 男子シングルス・男子ダブルスでルブラン兄弟の勢いを止められず、ゲーム差を縮められた。
  • 「欧州勢の一発の破壊力」に対して、ラリー戦へ引き込みきれなかった点が戦術的課題として浮き彫りになった。

この章の要点

  • 欧州勢には「回転とコース」で主導権を握り、中盤で一気に差を広げる戦い方が機能している。
  • フランス戦の逆転負けは、男子シングルス・ダブルスのマッチアップの難しさを示した。
  • ヨーロッパの若手トップ選手への「専用プラン」の重要性が増している。

戦術分析から見える今後の課題と展望

ここまでの日本代表の戦いを俯瞰すると、混合ダブルス・女子シングルス・ダブルスの強さが際立つ一方で、「エース同士の一騎打ち」になる男子シングルスが勝敗のカギを握っていることが分かります。

  • フォーマット上、混合ダブルスの取りこぼしを男子シングルスで取り返す未来図も必要。
  • フランス戦のようなリード時のゲームマネジメントや、流れが変わりかけた瞬間のタイムアウト・戦術指示がさらに重要になる。
  • 中国をはじめとしたライバル国も混合団体の戦術を洗練させているため、「相手別の準備」と「現場での修正力」が今後のテーマとなる。