卓球混合団体W杯2025 観客の民度は本当に低かった？問題視された理由を整理

この記事の基準日は2025-12-07です。中国・成都で行われている卓球混合団体W杯2025では、日本戦のたびに会場の雰囲気が話題になり、「観客の民度」「敬意の欠如」といった言葉がSNS上で急速に拡散しました。一方で、中国メディアや現地紙も一部の運営や観客の振る舞いを疑問視していると報じられており、状況は単純な「日中対立」では語れません。

何が「観客の民度の低さ」として問題視されたのか

まず押さえておきたいのは、「民度」という大きなラベルが付けられているものの、実際に問題視されたのはごく一部の行為だという点です。報道やSNS投稿で指摘された主なポイントを整理すると、以下のようになります。

要点

• 問題視されたのは、ブーイングや差別的と受け取られるヤジなど、特定の行為
• 張本選手の選手紹介トラブルは、中国メディアからも「敬意の欠如」と批判されたと報じられている
• ただし、全ての観客が同じ振る舞いだったわけではなく、冷静に応援していた人も多い

国際大会における観客マナーの基本

「ホームの熱」と「行き過ぎ」の境界線

ホーム国のチームを大声援し、相手のポイントにため息が出ること自体は、多くのスポーツで見られる光景です。一方で、相手選手や国籍を侮辱する発言、プレーを妨げる大声やレーザー光線などは、どの競技でも明確なNG行為とされています。

卓球でも、ラリー中の叫び声やフラッシュ撮影、相手への差別的なヤジは、審判や主催者が注意・退場を命じることが可能なケースです。今回の大会では、公式に観客退場や没収試合といった極端な制裁が発表されたわけではなく、「グレーな行為が多かった」という印象を抱くファンが多い状況だと考えられます。

要点

• ホーム側の大きな声援自体はスポーツでは珍しくない
• しかし、差別的発言や明確なプレー妨害はどの競技でも共通のNG
• 今大会では「ルール違反とまでは言い切れないが不快」というグレーゾーンが問題になった

なぜ「民度」という言葉が使われてしまったのか

日本のSNSでは、一部の行為への怒りから「○○の民度」と国や地域全体をまとめて批判する言葉が多く見られました。特に、張本選手への一連の扱いに対して、日本国内で「決して許されない」「開催国の資格がない」といった激しい表現が飛び交ったことが背景にあります。

しかし、「民度」という言葉は、その国・地域に暮らす多様な人々を一括りにしてしまい、問題のある行為だけでなく、冷静に観戦していたファンや公平な報道を行った現地メディアまで巻き込んでしまいます。実際、中国の一部メディアは主催者のミスを批判し、張本選手への対応に苦言を呈していると伝えられており、「国内からも自浄的な声が出ている」という視点も忘れてはいけません。

要点

• 怒りのあまり、国や地域全体をまとめて批判する「民度」という言葉が使われやすくなる
• 一括りの批判は、冷静なファンや問題を指摘する現地メディアも巻き込んでしまう
• 行為そのものを批判しつつ、相手社会の中にある自浄作用も認める姿勢が重要

今後の国際大会に向けて必要な対応

観客マナーをめぐる問題は、特定の大会だけでなく、多くのスポーツイベントで繰り返し議論されてきました。今回の混合団体W杯の経験を踏まえ、今後に向けて考えられる対応策を整理します。

主催者・連盟側ができること

主催者やITTFには、以下のような取り組みが求められます。

• 開幕前や試合前に「差別的発言の禁止」「選手への敬意」を明確にアナウンスする
• 観客席の問題行為に対して、警告〜退場までのルールを事前に周知し、一貫して運用する
• トラブルが起きた際には、経緯や再発防止策をできる範囲で公開し、透明性を高める

ファン・メディア側ができること

ファンやメディアにも、冷静さと公平さが求められます。

• 問題行為を批判する際も、「○○人は」「○○の民度は」といった一括り表現を避ける
• 感情的な動画・投稿だけでなく、複数の情報源を確認して状況を把握する
• 選手を守るためにも、「改善してほしいルールや仕組み」に焦点を当てて意見を発信する

要点

• 主催者はマナー指針と対応ルールを明確に示し、実際に運用する必要がある
• ファン・メディア側も、一括りの批判ではなく具体的な行為や制度に目を向けることが重要
• 互いの社会にある「自浄作用」を認め合うことが、今後の国際大会の質を高める